グループホームは、認知症の高齢者が自立した生活を送れるようサポート体制が充実した施設です。
こう聞いても「それでは実際にどのようなサービスが受けられるのか」「費用はどれくらい必要なのか」といった詳しい内容がわからない方もいるのではないでしょうか。
本記事ではグループホームのサービス内容や費用、利用するメリット・デメリットを解説します。
数あるグループホームの中から最適な施設を選ぶポイントについても説明しますので、施設選びの参考に、ぜひ本記事をご活用ください。
目次
グループホームとは?
グループホームは、認知症の方が共同生活をおくる施設で自立した生活を目指します。
入居者の方が落ち着いた生活を送れるように、スタッフや他の入居者と馴染みの関係を構築できる少人数制で、アットホームな雰囲気が特徴となっています
部屋のタイプはユニット型とサテライト型がありますが、一般的にはユニット型のグループホームが多く存在します。ユニット型では、5〜9人の少人数をユニットとした共同住宅の形態でケアサービスが提供されます。
ユニット型では同じ階に複数の個室があり、共用のリビングスペースやキッチンを利用する形態で、プライバシーを重視しつつ他の入居者と交流できる環境を提供します。
入居の条件としては、原則として65歳以上であること、要支援2以上、認知症の診断を受けていることがあります。
介護保険法での定義
グループホームは「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれ、介護保険法では以下のように定義されています。
グループホームの定義(介護保険法第8条第20項)
この法律において「認知症対応型共同生活介護」とは、要介護者であって認知症であるもの(その者の認知症の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く。)について、その共同生活を営むべき住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことをいう。
出典:介護保険法
介護保険法では、グループホームは急性を除く認知症高齢者に対し、共同住居での生活を提供する場所であると定義されています。さらに、家庭的な環境と地域住民との交流、入浴・排せつ・食事等の介護や日常生活上の世話など、自立した日常生活を送れるよう支援する場所であることも定義に含まれます。
また、厚生労働省でも、以下の条件が満たないとグループホームを運営してはならないと定めています。
条件項目 | 詳細 |
---|---|
運営基準 |
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利用者 |
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設備 |
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人員配置 | ・介護従業者 日中:利用者3人に1人(常勤換算) 夜間:ユニットごとに1人・計画作成担当者 ユニットごとに1人 (最低1人は介護支援専門員)※2・管理者 3年以上認知症の介護従事経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者が常勤専従 |
※1:地域の実情により効率的運営に必要と認められる場合は、3つの共同生活住居を設けることができる
※2:ユニット間の兼務はできない。
出典:認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)について
グループホームのサービス内容
日常的な生活支援と認知症ケアが、グループホームで受けられる主なサービス内容です。
日常生活はできるだけ入居者自身が行い、介護スタッフはあくまでそのサポート役として接します。認知症ケアについては、地域交流・レクリエーション・リハビリを通して認知症の進行を抑えるよう、施設ごとに内容が定められています。
施設に看護師が常駐していれば日常的な医療ケアを受けられるほか、体調が悪化したときでも、提携する医療機関にて迅速な医療診療を受けられるでしょう。
需要が高まってきたとされる「看取りサービス」に対応するグループホームも、近年では増えてきました。
サービス | 内容 |
---|---|
日常的な生活支援 |
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認知症ケア |
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医療・看護 |
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看取り |
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グループホームの入居条件
申し込みの際は、介護度の状態や診断書の手続き、希望の施設が受け入れ可能な要件を満たしているかの確認が必要です。
入居には上記に加え、各施設で細かく定められているケースもあります。
重度の認知症の方や寝たきりの方など、自立した生活が難しい方は入居を断られる可能性もあるので、施設側と打ち合わせをする際に確認を取りましょう。
入居条件 |
---|
|
グループホームにかかる費用
入居には施設利用における「一時金」「月額費用」「介護サービス費」が必要です。以下では、それぞれの特徴を確認します。
入居時の費用の内訳
入居一時金の金額は各施設により異なります。
相場は0〜数百万円と幅広く、おおよそ10〜50万円の範囲で設定している施設が多いようです。
一時金は施設により、前払金と敷金とに名目がわけられます。
前払金の場合は毎月賃料等に充足される、いわゆる償却扱いがされ、設定した償却期間より早く退去したときには返還金を受け取れます。
敷金と説明された場合も、居室の原状回復費用後に残金があれば、退去後に返金してもらえるでしょう。
月額費用の内訳
月額費用の内訳は以下になります。
各費用は施設により異なるため、料金は目安としています。
費用 | 料金 |
---|---|
賃料 | 60,000~80,000円 |
食費 | 30,000~40,000円 |
水道光熱費 | 10,000~20,000円 |
管理費 | 10,000~20,000円 |
合計 | 110,000~160,000円 |
地域の立地や設備の充実度が費用に反映されるため、具体的な料金が知りたい方は各施設にお問い合わせください。
自己負担額
前述した月額費用のほかにも、自己負担額として介護サービス費や、オムツ代・理美容代・日用品などの費用が必要です。
介護サービス費については、介護保険が適用されますが、要介護度に応じて自己負担額が決まります。
費用 | 料金 |
---|---|
その他(オムツ代・理美容代・日用品など) | 10,000~20,000円 |
介護サービス費
※1割自己負担の場合 |
要支援2~要介護5:22,440~25,740円 |
介護サービス費は上記以外にも、看取りや介護体制を充実させるための「認知症専門ケア加算」や「医療連携体制加算」などの「加算」を負担する場合があります。
グループホームのメリットは?
グループホームに入居した際に受けられるメリットには、以下の5つが挙げられます。
【グループホームのメリット】
- 認知症の症状を和らげる効果がある
- 専門スタッフの常駐で家族も安心できる
- 慣れ親しんだ地域で生活できる
- アットホームな空間で暮らせる
- 介護付き有料老人ホームより金額が安い
メリット①認知症の症状を和らげる効果がある
グループホームでは、料理や洗濯などの日常生活や、手先を使う作業(園芸、レクリエーション)を緩和ケアの一環として行います。
地域のお祭りへの参加や近所の子どもたちを招くなどの交流を図ることにより、病状の進行を遅らせられる可能性があります。
メリット②専門スタッフの常駐で家族も安心できる
認知症ケアの専門スタッフが日中は入居者3名につきスタッフが1名、夜間も最低1名が常駐しています。
専門知識と豊富な経験を持つスタッフによるサポートが期待できるので、入居者の方も安心して過ごせます。
メリット③慣れ親しんだ地域で生活できる
入居者は全員、住民票と同じ住み慣れた市区町村にある施設で過ごします。
入居者同士は地元の話題でコミュニケーションが取れるうえ、慣れない地域で暮らすといった環境の変化もないため、精神的なストレスが軽減されます。
メリット④アットホームな空間で暮らせる
グループホームでは、5〜9人の少人数で共同生活を送ります。
小規模な居住空間のなか、家庭的な雰囲気を感じながら生活できるでしょう。
認知症では顔や名前が覚えにくいため、日常的に顔を合わせる入居者やスタッフと暮らすことで、落ち着いた環境の中で日々の生活を送れます。
メリット⑤介護付き有料老人ホームより金額が安い
入居一時金や月額費用など、グループホームに比べ、介護付き有料老人ホームのほうが高額です。重度の要介護者なら、介護サービス付き有料老人ホームにて手厚い看護を受けられるでしょう。
しかし、要介護度が比較的軽度の方なら、グループホームのほうが費用を安く抑えることができます。
グループホームのデメリットは?
認知症ケアに最適と言われるグループホームですが、入居にはデメリットも存在します。
それぞれ詳しく説明します。
【グループホームのデメリットは?】
- 定員数が限られているためすぐには入居できない
- 施設と同じ地域に住民票がないと入居できない
- 看護師が在籍していないと医療ケアを受けられない
- 入居条件に合わない人は退去させられる可能性もある
- 完全なプライバシー保護は難しい
デメリット①定員数が限られているためすぐには入居できない
希望の施設にすぐ入居できるとは限りません。
1つの施設には、1ユニットにつき「5~9人」「1施設につき最大3ユニットまで」と決められており、多くの施設で2ユニットが採用されています。
グループホームの需要が高まり、定員がすぐ埋まる現状も直ちに入居できない要因の1つとして挙げられます。
デメリット②施設と同じ地域に住民票がないと入居できない
入居先を探す際も、住民票と同一の市区町村にある施設にしか入居できません。
グループホームは「地域密着型サービス」として、精神的なケアのためにも、住み慣れた地域でのサービスが求められるためです。
デメリット③看護師が在籍していないと医療ケアを受けられない
グループホームでは介護スタッフの在籍義務は設けられていますが、看護師の配置は義務付けられていません。
もし、入居を検討するグループホームに看護師が在籍していない場合は、医療機関と提携しているか確認する必要が出てきます。
デメリット④入居条件に合わない人は退去させられる可能性もある
グループホームに入居するには、ある程度自立して日常生活を送れることが条件として挙げられます。
家事に対して拒絶する人、他人への暴力や自傷行為が頻発する人だと、周囲の入居者にも悪影響を及ぼします。条件から外れる人に対しては、施設側から退去を言い渡される可能性が出てくるでしょう。
デメリット⑤完全なプライバシー保護は難しい
共同生活を送る施設のため、トイレや浴室、洗面台などはユニットごとに共用となっています。認知症ケアの一環として他人との交流も大切なため、完全なプライバシーを保つことは難しいといえます。
他の介護施設サービスとの違い
同じ介護サービスを提供していても、受け入れ態勢や入居条件、費用などは異なります。
以下、それぞれの特徴をまとめたうえで、違いを説明します。
比較項目 | グループホーム | 介護付き有料老人ホーム | サービス付き高齢者向け住宅 | 特別養護老人ホーム | ケアハウス |
---|---|---|---|---|---|
サービス内容 |
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|
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認知症 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | △ |
入居対象者 | 65歳以上※ | 65歳以上※ | 60歳以上※ | 65歳以上※ | 65歳以上(介護型) |
費用 |
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要支援・要介護度 | 要支援2~要介護5 | 要支援1~要介護5 | 自立、要支援1~要介護5 | 要介護3~5 | 自立、要支援1~要介護5 |
在籍スタッフ | 介護職員、看護職員 | 介護職員、看護職員ケアマネージャーなど | 介護職員、看護職員、機能訓練指導員など | 介護職員、看護職員、介護支援専門員など | 介護職員、看護職員、機能訓練指導員など |
看取り対応 | ◎ | ◎ | △ | ◎ | × |
◎:充実している、〇:受け入れ可、△:一部可、×不可
※:特定要件を満たしていれば、対象年齢以下も入居可
介護付き有料老人ホームとの違い
介護付き有料老人ホームは介護サービスや健康管理など含め、看護体制が充実した施設です。
介護サービス費が定額であることや、看護職員の常駐・協力医療機関との提携が義務付けられている点でも、安心した看護サービスが期待できます。
しかし、重度の要介護者にも対応しているぶん、入居一時金や月額費用はグループホームより高額になります。

介護付き有料老人ホームは定額で介護サービスが受けられます。レクリエーションやサークル活動など施設ごとの特色あふれるサービスも魅力です。充実した介護サービスと自分らしい生活が両方得られるサービスとして多くの方に選ばれています。 この記事では、介護付き有料老人ホームとはどんな介護サービスを提供して...
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サービス付き高齢者向け住宅との違い
サービス付き高齢者向け住宅は要介護度が低い方でも入居が可能で、生活の自由度が高い施設です。
介護型と一般型にわけられ、介護型では入居時から介護ケアを受けられ、一般型では外部事業者の介護サービスを利用しなければ介護を受けられません。
グループホームとの違いは、配偶者や要介護認定を受けた親族との同居が可能な点です。
ただし、一般型では要介護度が進行した場合、退去になる可能性があります。
特別養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホーム(特養)は、ほとんどが非営利の社会福祉法人が運営しています。
認知症の方も入居可能ですが、原則として要介護3以上の方が対象です。
月々の利用料金の半分が医療費控除の対象となり、長期間の入居、寝たきりの方や看取りにも対応しています。
グループホームやほかの施設より費用が安いぶん、申し込みが多く、入居まで待たされる待機時間の長さが問題となっています。
ケアハウスとの違い
ケアハウスは、社会福祉法人や地方自治体で運営されている公的な介護施設です。
一般型と介護型にわかれ、認知症の高齢者も受け入れ可能です。介護型を希望する場合は年齢が65歳以上、要介護度1以上が入居条件となります。
グループホームと同様に入居一時金が0円の施設もあり、なおかつ月額費用も安く抑えられる点が特徴ですが、看取りサービスには対応していません。
グループホームを選ぶときのポイント
グループホームを選ぶ際のポイントを5つピックアップしました。気をつけるべき点や、チェックすべき点を以下に解説します。
【グループホームを選ぶポイント】
- 入居にかかる費用をしっかり確認すること
- スタッフの介護・医療体制を確認すること
- 入居者の様子を施設見学して確認すること
- 施設や設備の確認すること
- 面会に通いやすい立地か確認すること
ポイント①入居にかかる費用をしっかり確認すること
入居一時金と月額の日常生活費や介護サービス費は、グループホームにより設定料金が異なります。
入居当初は低くても、介護度があがると負担額も増加します。負担が増したときの月額費用や介護サービス費が無理なく支払える金額で収まるかを検討してください。
その際に、費用の内訳や、介護サービスの加算内容をしっかり確認することが大切です。
ポイント②スタッフの介護・医療体制を確認すること
介護や看護スタッフのケア体制が十分整っているかで、サービスの質が変わります。
在籍人数や経験年数を事前に確認し、サービス内容が充実しているか確認しましょう。
医療ケアを希望する方は、看護師が在籍しているか、もしくは医療機関や看護サービスとの提携がされているかもチェックしてみてください。
ポイント③入居者の様子を施設見学して確認すること
入居者がどのように過ごしているか、施設を見学して様子を確認しましょう。
見学の際に表情が明るく、生き生きとした様子が伺えるなら、充実した毎日を過ごしている証拠です。
逆のケースとして、全体的に暗い雰囲気を漂わせている方が多いとサービスが行き届いていない可能性があります。食事やレクリエーション時の見学がおすすめです。
ポイント④施設や設備の確認すること
入居後に安心して過ごせるか、施設の安全性や設備の確認をしましょう。
廊下や居室の広さ、お風呂などにケガ防止の対策がされているかは最低限チェックすべきポイントです。
入居時に家具や道具を持ち込みたい場合は、スペースに余裕があるかの確認も必要です。イメージを再現するためにも、実際に入居されている方の部屋を見学できるか聞いてみましょう。
ポイント⑤面会に通いやすい立地か確認すること
できることなら、面会に通いやすい場所を検討しましょう。
実際に顔を見て話したい方もいるでしょうし、連絡があったときにすぐ駆け付けてくれる場所に自宅があれば、入居しているご家族も安心して過ごせます。
通いやすい場所なら、面会時間の都合もつけやすく、仕事帰りに寄ることもできます。
グループホームへの入居から退去までの流れ
グループホームの入居手続きがどのような流れで行われるか解説します。必要な書類や、入居の際に気をつけたいポイントにも注目してお伝えします。
【STEP.1】情報収集と施設見学
施設の公式サイトや情報誌である程度施設を絞れたら、見学を申し込みます。
その際に、誌面やインターネットではわからない雰囲気や設備など、気になる点を確認してください。
ショートステイが可能なら、体験を通して疑問点や入居後の不安も解消できるでしょう。
【STEP.2】入居申し込みと必要書類の用意
申し込み時は、住民票・認知症診断書・健康診断書・所得証明など各書類が必要です。施設側からも説明があります。
必要数や種類を確認したうえで、入手に時間がかかりそうな書類については早めに用意をしましょう。
【STEP.3】入居判定に向けた面談
利用者の状態や家庭での様子を把握するために、面談が行われます。入居後も安全に生活できるか、要介護度や自立度など入居に影響がないか確認できれば契約が行われます。
契約書の記入・重要事項の確認・入居費用・緊急時の対応などの説明があるので、疑問に感じることについてはその場でしっかりと確認をしましょう。
【STEP.4】入居時に必要な荷物の持ち込み
入居の際は、身の回りで必要な荷物や家具を持ち込むことができます。生活に必要な家具や道具があれば、リストアップしておきましょう。
荷物の量やサイズにより持ち込みが制限されるケースがあります。不安に感じたら、施設側と事前に確認しておきましょう。
【STEP.5】退去する場合の手続き
通常の手続きであれば、契約書に則った手順で退去が可能です。申請後に費用の清算が必要な場合もあるので、施設の担当者に確認してください。
ただ、料金の未払いやほかの入居者への暴力が続くと、入居が難しいと判断され入居中でも施設側から退去勧告を受ける可能性があります。
ビジネスパーソンのみなさまへ(まとめ)
この記事では、グループホームのサービス内容から費用、メリット・デメリットについて解説しました。
グループホームは
- 認知症ケアや看護ケアに対応
- 住み慣れた地域で、アットホームな環境
- 人気の施設では即入居が難しい
といった特徴があります。
認知症の対策には日常的に手や身体を動かす必要があり、入居者や地域に住む人たちとの生活やレクリエーション活動を通して進行を遅らせる可能性もあります。
看護士のいるグループホームでは医療ケアも受けられるなど、家族にとっても安心できる体制が整っています。
ただ、施設によってはサービス内容や生活環境がそれぞれ異なります。
グループホームを検討する際は見学を行い、生活環境やサービス内容、スタッフの対応を十分確認してから入居を決めるようにしましょう。